kiyoshi-sawano’s blog

沢野清です。 趣味はラクガキです。コントーション(軟体芸)的なものをよく描いてます。

昨年のベスト

 SFつながりで私が昨年読んだSFベスト1を(今頃ですが)・・・。

ワイオミング生まれの宇宙飛行士 宇宙開発SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

ワイオミング生まれの宇宙飛行士 宇宙開発SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

 この本、見ての通りアンソロジーですが、ご紹介したいのは表題作ではなくて、冒頭に収録されている『主任設計者』(作/アンディ・ダンカン)でございます。ざっくり言って、ソ連のロケット技術者セルゲイ・P・コロリョフアメリカのロケット開発を指揮したフォン・ブラウンとロケット開発競争を行った実在の人物)と彼の後継者の半生を虚実をない混ぜにして描いたものなのですが、感動的であると共に、立ち位置が不思議な作品であります。
 知らない人が読めばノンフィクションと勘違いしかねない作品なのですが、なぜか私にはれっきとした「SF」として読めてしまうんですよ(そしておそらく多くの人もそうだからこそ、このアンソロジーに収録されているんでしょう)。歴史小説や時代小説も作者が事実を元に想像力でエピソードを膨らませる点では似たような事をしているのに、何故なんでしょうか?私なりの解釈としては、おそらく、A・ダンカンがエピソードを創作するにあたって,1940〜50年代の(A・C・クラークやハインラインその他の)宇宙開発テーマの作品が持っているようなスピリットを志向した結果ではないか、と思っております。宇宙を目指すために人は何をしなければならないのか、そして何を犠牲にしなければならないのかをリアルに描いたこの作品は、ある意味、究極のハードSFと言えるのではないのでしょうか。