月刊 COMIC (コミック) リュウ 2011年 04月号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2011/02/19
- メディア: 雑誌
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そして、なによりお目当ての速水螺旋人氏の「靴ずれ戦線−魔女ワーシェンカの戦争−」が、実に良かったです。今回の幻想(=非科学的)キャラはロシア正教会の聖人の聖カシヤーン様!うるう年の2月29日だけ世界に解き放たれるこの方は、聖人のくせに妖怪並みにロシアで恐れられているそうです。本作でも、愛嬌があるもののメッチャ強くて怖くてかっこいい爺様でありました(キリスト教の聖人なので、当然、魔女であるヒロインのワーシェンカの敵なんですw)。
さて以下はちょっとマニアックな話でありますw。本作は始まってすぐに1944年2月ウクライナにおけるソ連軍によるドイツ軍包囲戦下の物語であることが明示され、分かる人には「おお!チェルカッシー包囲戦か!?」と感じることと思います。ところが、同戦闘は2月16日に終結しているため、2月29日では間に合わないように思われます。実は、ロシア正教が信仰されていたロシアでは、共産主義革命までグレゴリウス暦ではなく、より古いユリウス暦が使用されていたのです。ユリウス暦はグレゴリウス暦よりうるう年が多いため、グレゴリウス暦に13日足した日付になるそうです。そうすると「16+13=29」でぴったり合うわけです(ちなみに4で割り切れる年がうるう年になるわけですが、1944も4で割り切れるのでうるう年であることが分かります)。ロシア正教の聖人であれば当然ユリウス暦のうるう29日に出現するわけです。と、作品が先にあって、後から調べれば分かるわけですが、普通はチェルカッシー包囲戦の終結日がユリウス暦のうるう29日だなんて気が付かないですよね。
速水氏のブログやエッセイ、同人誌などを見ると、読書量の多さと博識さにいつも圧倒されるのですが、今回の「靴ずれ戦線」を読んで、改めて氏の博識さに驚かされました。